請求書の現金化とは
請求書の現金化とは、支払期日前の請求書を請求書買取業者に売却し、所定の手数料を差し引かれた買取金額を現金化することができる資金調達方法です。このサービスは、一般的に「請求書買取サービス」と呼ばれており、近年利用者数が増加傾向にあります。日本の企業間取引は、代金・サービスの提供から代金の支払いまでに30日~60日程度の支払いサイトが存在する「掛け取引」が主流です。掛け取引では、商品・サービスの提供と同時に代金が支払われないため、後に代金を請求することができる権利が発生し、この権利を「売掛債権」と呼びます。掛け取引は、売掛先に現金がない状態でも商品・サービスを提供することができるため、取引の場を広げることができるメリットがあります。一方で、手元に現金が入るまでの期間が長いため、資金力の低い中小零細企業や個人事業主は資金繰りが悪化しやすい傾向にあるのです。売掛金の回収に掛かる期間が長くなればなるほど、手元に現金がない資金ショートに陥る可能性が高く、黒字倒産となってしまう可能性が高くなってしまいます。しかし、請求書買取サービスの利用により、請求書を現金化することで、滞納分の支払いや資金ショートを解消することが可能です。請求書を現金化する際は、1%~30%の手数料が差し引かれますが、事業継続のためには欠かせない資金調達方法だといえるでしょう。請求書の現金化は、中小企業や個人事業主の融資依存度を解決するために、経済産業省も利用を推奨しています。
請求書買取サービスで請求書を現金化する仕組み
請求書買取サービスで請求書を現金化するためには、請求書買取業者に請求書を売却する必要があります。請求書買取業者は、利用者に対して請求書の額面から所定の手数料を差し引いた金額を振り込み、請求書本来の支払期日に売掛金を回収する仕組みとなります。大まかな仕組みは上記の通りですが、請求書買取サービスには利用者と請求書買取業者の2社間で取引を行う「2社間契約」と売掛先も取引に参加し3社間で取引を行う「3社間契約」があります。売掛先の関わり方や入金スピード、手数料など、様々な点が異なるため、自社に適した契約方法を選ぶようにしましょう。
2社間契約の仕組み・特徴
2社間契約の仕組みは以下のとおりです。
1. 利用者と売掛先の間で売掛金が発生する
2. 利用者が保有している請求書を請求書買取業者に売却する
3. 請求書買取業者は請求書の買取金額を利用者の指定口座に振り込む
4. 請求書本来の支払期日に売掛先から利用者に売掛金が入金される
5. 利用者は入金された売掛金をそのまま請求書買取業者に入金する
2社間契約は、利用者と請求書買取業者の2社間で取引を行う仕組みです。売掛先への通知が必要ないため、売掛先に知られることなく請求書を現金化することができます。また、請求書買取サービスの利用に関して売掛先から承認を得る必要がなく、スムーズに請求書を現金化することができるため、最短即日で資金調達することも可能です。ただし、売掛金が一度利用者に入金されるため、利用者が私的に利用してしまうリスクが懸念されます。請求書買取業者はこのリスクをカバーするために、手数料を10%~30%と高めに設定します。
3社間契約の仕組み・特徴
3社間契約の仕組みは以下のとおりです。
1. 利用者と売掛先の間で売掛金が発生する
2. 利用者は請求書買取サービスの利用に関して売掛先から承認を得る
3. 利用者が保有している請求書を請求書買取業者に売却する
4. 請求書買取業者は請求書の買取金額を利用者の指定口座に振り込む
5. 請求書本来の支払期日に売掛先から請求書買取業者に売掛金が入金される
3社間契約は、利用者と売掛先、請求書買取業者の3社間で取引を行う仕組みです。請求書買取サービスの利用に関して売掛先から承認を得る必要があるため、2社間契約よりも請求書を現金化するまでに時間を要します。ただし、2社間契約のように利用者が売掛金を私的に利用するリスクがないため、手数料は1%~9%と低めに設定されます。また、請求書売却後は、請求書買取業者が債権の回収を行うため、利用者が債権の回収及び取り立てを行う必要はありません。
請求書買取サービスで請求書を現金化するメリット
請求書買取サービスは、請求書さえ保有していれば誰でも利用できる可能性のある資金調達方法です。そのため、融資などの審査に通過することが難しい中小零細企業や個人事業主にとっては、唯一無二の資金調達方法だといえます。請求書買取サービスで請求書を現金化するメリットは以下のとおりです。
1.最短即日で資金調達できる
請求書買取サービスには、入金スピードに特化したサービスやオンライン完結で利用できるサービスもあり、最短即日で資金調達することが可能です。請求書を現金化することで、資金繰りの改善や事業拡大のための準備金の調達など、様々なケースに活用することができます。一方、企業の資金調達方法として最も知名度の高い銀行融資では、申し込みから融資実行までに数週間~2ヶ月ほど時間がかかります。また、必要書類が多いうえ、手続きも面倒です。そのため、急いで資金調達を行いたい場合は、請求書買取サービスを活用するのが良いでしょう。
2.貸し倒れリスクを回避できる
掛け取引では、商品・サービスの提供から代金の回収までに一定の期間が空くため、売掛先の倒産や経営状況の悪化により、売掛金が未回収になるリスク、いわゆる貸し倒れリスクがあります。上述したように、売掛金が未回収となれば、「売上はあるが手元に現金がない」という状態に陥り、最悪黒字倒産となってしまう可能性もあります。しかし、請求書買取サービスの利用により、請求書を現金化することで貸し倒れリスクを回避することができます。なぜなら、請求書買取サービスは原則償還請求権なしの契約だからです。請求書を請求書買取業者に売却後は、売掛金が未回収となったとしても弁済を求められることはありません。
3.自社の信用情報が審査に与える影響が少ない
請求書買取サービスの審査では、売掛先の信用力や請求書の内容が重要視されるため、自社の信用情報が審査に与える影響が少ないというメリットがあります。自社の信用情報・経営状況が審査に影響を与えないため、売掛先の信用力や請求書の内容に問題がなければ、赤字決済や税金滞納をしている方でも利用可能です。一方銀行融資の審査では、利用者の信用情報・経営状況から返済能力を判断されるため、赤字決済や税金滞納している方はもちろん、開業間もない企業なども審査落ちしてしまう可能性が高い傾向にあります。
4.企業価値を高めることができる
請求書を現金化することで、企業価値を高めることができます。なぜなら、請求書の現金化によって得た資金を負債の返済に充てることで、貸借対照表のオフバランス化ができるからです。また、ROAや自己資本比率、売掛債権回転率など、様々な企業価値の指標を高めることができます。企業価値を高めることで、金融機関からの評価が上がり、多額の融資を受けることも可能になります。また、企業価値が高い企業は売掛金の未回収リスクが低いと判断されるため、新規取引先の開拓も容易になります。一方、銀行融資で得た資金は「負債」として計上されるため、貸借対照表の肥大化を招くことになります。貸借対照表が肥大化すると企業価値が低くなってしまうため、金融機関や取引先との関係が悪化してしまう可能性も考えられるでしょう。
5.簡単な手続きで資金調達できる
請求書の現金化は、入金スピードが早いことからも分かるように、銀行融資など他の資金調達方法と比べて手続きが簡単です。請求書買取業者に請求書の現金化を申込み、審査、入金とスピーディーに手続きが進んでいきます。また、オンラインで手続きを完結することが可能な請求書買取業者も増加傾向にあり、オフィスや自宅など、どこからでも請求書の現金化を申し込むことができます。請求書買取業者から提出を求められる書類が少ないうえ、担保・保証人を用意する必要もないため、簡単に請求書を現金化することが可能です。
請求書買取サービスで請求書を現金化する際の注意点
請求書買取サービスで請求書を現金化することにより得られるメリットは多数ありますが、請求書を現金化する際はいくつかの注意点も理解しておかなければいけません。注意点を理解せずに請求書を現金化してしまうと、何らかのトラブルに巻き込まれる可能性もあります。本章では、請求書買取サービスで請求書を現金化する際の注意点について解説していきます。
1.高額な手数料を請求される可能性がある
請求書を現金化する際は、手数料が発生します。手数料は、売掛先の信用力や請求書の内容など、売掛金の未回収リスクに応じて設定されますが、一般的に2社間契約では10%~30%、3社間契約では1%~9%が相場となります。それほど高くはないと感じられた方もいるかと思いますが、請求書を現金化する際の手数料は、金利に換算すると年利100%を超えてしまうことも珍しくありません。例えば、1,000万円の請求書を手数料10%で現金化した場合は、100万円の高額な手数料が発生することになります。請求書買取サービスでは、本来よりも早期に請求書を現金化することができる反面、場合によっては高額な手数料を請求される可能性があることを理解しておきましょう。とはいえ、手数料の低さを強みとしている請求書買取業者や人員コストを削減できるオンライン完結型の請求書買取サービスを提供している請求書買取業者では、低い手数料で請求書を現金化することが可能であるため、利用する請求書買取業者選びも重要となります。
2.悪徳業者を利用してしまう可能性がある
請求書買取業者の中には、悪徳業者が存在します。請求書買取サービスは「売買契約」にあたるため、銀行などの金融機関のように貸金業登録を行う必要がありません。資金さえあれば誰でも開業することができるため、悪徳業者を利用してしまう可能性があることを理解しておきましょう。悪徳業者は、高額な手数料を請求してきたり、償還請求権ありの契約を結ぼうとするなど、利用者にとって不利益となる取引を行います。悪徳業者を利用してしまうと、資金繰りの悪化や何らかのトラブルに巻き込まれる可能性があるため、注意が必要です。
3.請求書の金額以上の資金調達はできない
請求書買取サービスでは、請求書の金額以上の資金調達はできません。なぜなら、請求書買取サービスは、保有している請求書を現金化するだけのサービスだからです。むしろ、請求書を現金化する際に手数料が発生するため、実際に資金調達することができる金額は、請求書の金額よりも少なくなってしまいます。様々なメリットがある一方で、調達したい金額以上の請求書を保有していなければ、満足のいく資金調達ができないということを理解しておきましょう。
まとめ
今回は、請求書を現金化することができる請求書買取サービスの仕組みやメリット、注意点について解説させていただきました。請求書買取サービスは、赤字決済や税金滞納している方でも請求書を保有していれば利用できるなど、非常に利用ハードルの低い資金調達方法です。担保・保証人が不要なうえ、銀行融資に比べて提出書類も少ないため、気軽に利用することができます。特に資金繰りの悪化や急に支払いが発生した際など、緊急を要する場合に頼りになります。請求書を現金化したい方は、ぜひMSFJにご相談ください。