ファクタリングと一括支払信託のうち、どちらで資金調達すればよいかわからないと悩んでいませんか。
どちらも売掛金を現金に換えられますが、サービスの違いに気をつけてください。
ファクタリングは売掛金を直接売却するのに対し、一括支払信託は売掛金の信託スキームにより、金融機関が早期資金化を行います。
それぞれの違いを知れば、お得な資金調達方法がわかるでしょう。
今回は資金調達に迷う方のため、ファクタリングと一括支払信託の違いをまとめました。
ファクタリングとは
ファクタリングとは、専門業者に売掛金を買い取ってもらうサービスです。
売買対象である売掛金は、企業が取引先から後払いを受ける権利です。
売掛金には支払期日があり、それまでに取引先が代価を決済します。
ファクタリングでは業者へ売掛金を売却して、支払期日前に現金化する方法です。
企業が売却額を入金してもらう際、一定の手数料が差し引かれます。
取引成立後、取引先から売掛金の相当額を回収しなければなりません。
ファクタリング業者が資金回収を済ませれば、一連の手続きが完了します。
融資やビジネスローンと違い、ファクタリングで得た資金は負債になりません。
そのため企業は返済義務を負わず、調達資金を自由に使えます。
以上からファクタリングは、手軽な資金調達方法として、多くの企業が利用しているのです。
一括支払信託とは
一括支払信託も、売掛金を活用した資金調達方法です。
信託のスキームに則りながら、金融機関が支払期日前の売掛金を換金します。
一括支払信託は売掛金を提供する企業や金融機関、売掛金の相当額を支払う取引先の3社間契約です。
3社間ファクタリングと似ていますが、売掛金を換金する業者が金融機関に限られています。
契約が決まれば取引先は金融機関へ、売掛金と関連したデータを渡します。
続いて金融機関が、企業へ受益権を譲渡する形です。
そのあと金融機関は企業へ売掛金の換金額を払い、最後に取引先は金融機関へ売掛金の相当額を決済します。
このようなプロセスで、一括支払信託は完了です。
売掛金の直接売買ではなく、売掛金に対応した受益権を企業が受け取り、決済を受ける点でファクタリングと違います。
ファクタリングと一括支払信託の5つの違い
ファクタリングと一括支払信託には、さまざまな違いがあります。
取引対象や審査基準などのしくみが異なるので、事前に確認してください。
資金調達方法によるしくみの違いを、以下で5つ解説します。
1．取引対象
2．審査基準
3．申請から現金化までの期間
4．2社間取引の有無
5．回収不能リスク
1．取引対象
ファクタリングと一括支払信託では、取引対象が異なります。
ファクタリングは売掛金自体を専門業者へ売却するしくみです。
売却までのプロセスがシンプルなので、企業は利用しやすいでしょう。
手軽に取引できるので、多くの企業が活用しています。
一括支払信託は、ファクタリングより取引プロセスが複雑です。
売掛金を信託財産として、企業が金融機関から受益権を受け取ります。
この受益権をもとに、売掛金の相当額を決済してもらうのです。
以上の理由からファクタリングより、取引に時間がかかりやすいでしょう。
ファクタリングは一括支払信託と取引対象が異なるぶん、売買の仕方もシンプルです。
ただしファクタリングの売掛金は一括払いであるのに対し、一括支払信託は売掛金の一部だけを対象に換金できます。
必要な調達額をもとに、依頼先を検討するとよいでしょう。
2．審査基準
資金調達方法が異なれば、審査基準も違います。
ファクタリングは、比較的審査基準が緩いといえます。
売掛金を出した取引先の信用力が重視される一方、AI審査により短時間で結果を出す業者もいるのです。
審査基準が簡易的なので、すぐに契約を結べる業者もいるでしょう。
一括支払信託は、ファクタリングより審査基準が厳しいといえます。
こちらも取引先の信用力が重視されますが、基準がファクタリングより厳格です。
売掛金の相手が大企業でないと、審査に通過できないことがあります。
大口取引による売掛金でないと、企業は利用しづらいでしょう。
ファクタリングは一括支払信託より審査基準が緩いぶん、小口取引の売掛金も売却しやすいのです。
3．申請から現金化までの期間
資金調達方法が異なれば、申請から現金化までの期間も変わります。
一部のファクタリング業者は、即日での資金調達が可能です。
企業と業者のみによる2社間契約で、売掛金をスムーズに換金できます。
審査時間の短さもあり、申請日当日の売掛金売却に加え、代価の入金まで受けられるのです。
一方一括支払信託は、即日入金が難しいでしょう。
企業と金融機関、取引先を交えた3社間契約になるからです。
金融機関は慎重に審査を行い、手続きにも時間をかけるため、入金までの時間がかかりやすいといえます。
資金調達を急ぐ企業には、利用しづらいかもしれません。
申請から現金化までの期間は、ファクタリングの方が短い傾向です。
4．2社間取引の有無
ファクタリングには2社間取引があります。
企業と業者だけで契約を締結し、業者が売掛金を買い取り、代価を入金するしくみです。
そのため企業は、取引先に知られないまま、支払期日前に売掛金を換金できます。
売掛金の売却後に取引先が企業へ相当額を支払えば、企業は業者へそのぶんを渡さなければなりません。
ファクタリングにも、取引先を交えた3社間契約があります。
しかし取引先に知られないで売掛金を売却するなら、2社間契約がおすすめです。
一方一括支払信託は企業と金融機関、取引先の3社間契約です。
2社間契約はないので、企業は取引先にサービスの利用を知らせなければいけません。
企業が支払期日前の売掛金の現金化が必要と知れば、取引先が資金繰りの悪化を疑い、今後の関係性に影響が及ぶこともあります。
そのため一括支払信託において、企業は取引先との関係性悪化のリスクに要注意です。
ファクタリングは一括支払信託と違い、2社間契約が利用できるので、取引先との良好な関係を守りやすいでしょう。
5．回収不能リスク
ファクタリングには回収不能リスクがありません。
業者へ譲渡した売掛金が回収不能になっても、企業は損失を受けないからです。
譲渡後の売掛金の所有者は、ファクタリング業者に移ります。
取引先からの資金回収に失敗した場合、業者が損失をカバーする形です。
一方一括支払信託は、取引先のトラブルがあると、企業が責任を負います。
支払期日前に売掛金を現金化する際、企業は売掛金を担保にしてお金を借りる形だからです。
支払期日までに取引先が金融機関へ決済しなければ、債務不履行が決まります。
その場合企業は取引先に代わり、売掛金の相当額を金融機関へ支払わなければなりません。
以上からファクタリングに回収不能リスクはありませんが、一括支払信託では回収不能リスクが生じます。
ファクタリングと一括支払信託のどちらがおすすめか
ファクタリングと一括支払信託のどちらがおすすめかは、企業の状況により変わります。
たとえば取引先の事業規模が小さい場合や、取引先との関係性を守りたい場合などは、ファクタリングがおすすめです。
一方一括支払信託は、売掛金の一部だけを現金化したい場合におすすめです。
おすすめの資金調達方法について、以下の3点を見ていきましょう。
取引先の事業規模が小さければファクタリングがおすすめ
小口の売掛金なら、ファクタリングで決済を受けるとよいでしょう。
一括支払信託だと、売掛金の取引先が大手でなければ、審査に通過しにくいといえます。
金融機関が取引を担うため、大口の取引でないと断られるでしょう。
そのため取引先が小規模事業者だったり、知名度が低かったりすると、一括支払信託を利用できないことがあります。
一方ファクタリングでは、小口取引でも業者に対応してもらえます。
業者によっては100万円以下の売掛金にも対応可能です。
ファクタリング業者には売掛金の買取金額に制限を設けており、たとえば下限が200万円なら、それ未満の売掛金には対応できません。
しかし一部業者は下限を設けていないので、その場合はあらゆる小口取引への対応が可能です。
以上から取引先の事業規模が大きくない場合、ファクタリングの方が売掛金を売りやすいといえます。
取引先に知られたくない場合もファクタリングがおすすめ
売掛金の譲渡を取引先に知られたくない企業もあるでしょう。
その場合もファクタリングを利用すれば、取引先との関係を守れます。
ファクタリングでは、企業と業者のみの2社間契約が可能なので、その場合は取引先に売掛金の売却を知られません。
自社のプライバシーを守りながら、資金調達を進められます。
一方一括支払信託は企業と金融機関、取引先の3社間契約です。
企業は金融機関だけでなく、取引先の同意も得なければいけません。
取引先が同意しないと、一括支払信託の利用は不可能です。
さらに売掛金の支払期日前の換金が必要と知ることで、取引先が企業の資金繰りの悪化を疑い、今後の取引に応じない可能性もあります。
このようなリスクを考えると、ファクタリングの2者間契約の方が、取引先との関係を守りやすいでしょう。
売掛金の一部だけを現金化するなら一括支払信託がおすすめ
売掛金の一部だけを現金化したいなら、一括支払信託が推奨されます。
ファクタリングではひとつの売掛金に対し、一括払いが原則です。
たとえば3000万円の売掛金を譲渡する場合、3000万円から一定の手数料を引いた金額が入金されます。
1000万円だけ必要でも、一部だけの換金は認められません。
一括支払信託では、売掛金の一部のみの換金が可能です。
たとえば3000万円の売掛金のうち、1000万円だけ必要なら、そのぶんだけ換金してもらえます。
金融機関は企業の金銭事情を踏まえ、売掛金について柔軟な対応が可能です。
売掛金の一部だけを求める場合、一括支払信託が利用可能か確かめましょう。
ファクタリングと一括支払信託の違いのまとめ
ファクタリングと一括支払信託は、ともに売掛金を使った資金調達方法ですが、取引プロセスが異なります。
ファクタリングは一括支払信託より審査基準が緩く、取引方法もシンプルです。
そのため余分なリスクを負わずに、資金調達を実現できます。
経営リスクを負わず短時間で資金調達するなら、ファクタリングがおすすめです。
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