債権譲渡登記ってなに?
債権譲渡登記ってなに?
債権譲渡とは、簡単に言えば債権(お金を受け取る権利)を譲渡する(他人に譲り渡す)ことです。債権(お金を受け取る権利)は民法第466条で財産権として自由に譲渡できることになっており、債権が譲渡された場合、譲受人にその権利が移ります。
ファクタリングは、売掛債権をファクタリング利用者様がファクタリング会社に売却し、ファクタリング会社へ債権を譲渡する取引になります。
ファクタリングではこの債権の売買が行われた事実を公示するため、法務局で登記をします。
これが「債権譲渡登記」です。
この債権譲渡登記を行うことで誰でも債権譲渡の記録を観覧できるようになります。
債権譲渡登記制度とは
法務省ホームページによると、
「債権譲渡登記制度は、法人がする金銭債権の譲渡や金銭債権を目的とする質権の設定について、簡便に債務者以外の第三者に対する対抗要件を備えるための制度です。金銭債権の譲渡又は金銭債権を目的とする質権設定をしたことを第三者に対抗するためには原則として、確定日付ある証書によって債務者に対する通知を行うか、又は、債務者の承諾を得なければなりませんが、法人が金銭債権を譲渡した場合又は金銭債権を目的とする質権設定をした場合には、債権譲渡登記所に登記をすれば、第三者にその旨を対抗することができます。」
とあります。
簡単に説明すると、
通常、債権を譲渡する際は確定日付のある証書によって債務者(売掛先)に通知を行うか、譲渡の承諾を得なければならないのですが、法人が金銭の債権を譲渡する場合は、債権譲渡登記所で登記をすれば確定日付ある証書による通知があったものみなし、第三者に対抗できます。
という制度です。
この債権譲渡登記制度は平成10年10月から法人の資金調達手段の多様化を背景に運用が開始されました。
法人が多数の債権を譲渡する場合は債務者も多数に及ぶため、すべての債務者に通知などの手続をとらなければならないとなると、手続・費用の面が重くなるので、実務的にすべての債務者に通知などの手続をとることが難しくなります。そこで、その実務を省略させることで、債権流動化の促進をはかるために出来た制度になります。
債権流動化を始めとする法人の多様な資金調達の円滑化を図るために出来た制度のため、法人であることが条件です。法務局で債権譲渡登記を行う際に法人の登記事項証明書が必要になります。
では、何のために債権譲渡登記が必要なのでしょうか。メリット・デメリットで説明します。
債権譲渡登記をするメリット
・二重譲渡の防止
ファクタリング利用者様の中には、稀ですが1つの売掛債権を複数のファクタリング会社へ持ち込み、二重・三重と多重に譲渡しようとする利用者様がいます。これは違法です。二重譲渡をされてしまうと、一方のファクタリング会社は売掛金が回収できたとしても、もう一方のファクタリング会社は回収できなくなるというリスクがあります。
ですが、債権買取の際に債権譲渡登記を行っていれば、その債権は買い取ったファクタリング会社にあるため、他のファクタリング会社がその売掛債権を買い取ることは出来ず、二重譲渡の心配がありません。
逆を言えば、債権譲渡登記所において債権譲渡登記が出来なかった場合、二重譲渡をしている、または差し押さえられている、ということがわかります。
そのため多くのファクタリング会社では、債権譲渡登記が必要となります。
例え債権譲渡登記を確認せず二重譲渡が行われてしまっても、債権譲渡登記の手続きを済ませているファクタリング会社が法的に守られるのです。
例えば、A社が同時期にB社とC社に債権を譲渡した場合、どちらが真の債権の所有者であるかは登記にて確認することができます。
B社に債権譲渡登記されていた場合にはC社は、B社や売掛先企業に対して債権の所有を主張することはできません。
この場合、C社は個別にA社に対して責任を追及することになります。
ですが、債権譲渡登記が行えるのは法人に限りますので、個人事業主様がファクタリングを利用したいと考えても債権譲渡登記を行うことができないため、個人事業主様は債権譲渡登記を行わなくてもよいとするファクタリング会社でしかファクタリングによる資金調達は出来ないということになります。
・対抗要件になる
対抗要件とは
先に説明しましたが、債権を譲渡した際、債権の譲受人(ファクタリング会社)が債務者(売掛先)や、二重譲渡されてしまった際の二重譲受人・差押債務者・破産管財人などに対して自分が債権の権利を持っていることを主張するためには、譲渡人(ファクタリング利用者様)から債務者に対して債権譲渡をしたことを通知するか確定日付ある証書にて承諾を得なければならないこととしています。このように、債権譲渡の事実を債務者や第三者に対して主張するための法律上の要件が債権譲渡の対抗要件といわれるものです。
ファクタリングの場合、ファクタリング利用者様とファクタリング会社は契約を交わしているので権利関係は明確ですが、当事者ではない第三者からすればどのような権利関係になっているのかはわかりません。そこで第三者に対しても権利関係を明確主張できるようにするために登記を行います。債権譲渡登記は、債権を持っているのが誰かを明確にすることができるのです。
債権譲渡登記は3社間の証明書?
2社間ファクタリングは、ファクタリング会社とファクタリング利用者様の2社間で締結するファクタリング方法です。売掛先を介さないために、債権をファクタリング会社に売価したにも関わらず利用者様が使い込んでしまうというリスクがファクタリング会社にあります。そのため2社間ファクタリングでは債権譲渡登記を必要とするファクタリング会社が多くなります。
3社間ファクタリングでは、ファクタリング会社とファクタリング利用者様に加え売掛先も契約に加わり、売掛先に債権譲渡の通知や承諾を得てからファクタリングを締結するので多重譲渡のリスクがなく、売掛金の入金は利用者様ではなくファクタリング会社になりますので使い込みのリスクはありませんが、債権譲渡登記をすることによって、債権の所有者をより明確にすることが出来ます。
債権譲渡登記をするデメリット
・売掛先企業に知られる恐れがある
債権の売買が行われた事実を公示するための債権譲渡登記を行うと、誰でも債権譲渡の記録を観覧できるようになります。売掛先企業が調べた場合、債権を譲渡したことを知られる恐れがあります。
ただし、以前は債権譲渡登記を行うと法人の商業登記簿謄本に記載されてしまいましたが、現在は別の債権譲渡登記ファイルに記載されるようになっています。
つまり、別の債権譲渡登記ファイルを確認されない限り、第三者が債権譲渡登記の有無を確認することができないので、知られる可能性は低いと言えます。
さらに、債権譲渡登記は誰が登記したということはわかっても、どの売掛債権なのかまでは記載されていないので、取引先が複数社ある場合は債権の特定ができません。
・金融機関の融資審査に影響が出る
債権譲渡登記を行うと誰でも債権譲渡の記録を観覧できるようになりますが、これは融資やビジネスローンの際に審査を行う金融機関にとっても同じことであり、債権譲渡をした記録は審査の際に確認されます。
以前債権譲渡登記をしたことがあるということで審査が否決になるというわけではありませんが、債権を譲渡したことがあるという事実が審査に悪影響を及ぼす可能性はあります。(下記に抹消登記とありますが、抹消登記の手続きを行っても履歴は残ります。)
・登記費用が掛かる
債権譲渡登記をするに当たり、登記費用が発生します。
債権個数5000個以下の場合1件につき7500円
債権個数5000個を超える場合1件につき15000円
延長登記1件につき3000円
抹消登記1件につき1000円
が発生します。
先に申し上げた通り、債権譲渡登記は法人様に限り可能な登記になります。
MSFJ株式会社では個人事業主様にも対応しており、登記無しでのファクタリングが可能です。
法人様であっても、利用者様のご希望により登記を留保することも可能です。
債権譲渡登記をするメリットは、債権未回収のリスクを減らすことができるということですのでファクタリング会社にあります。利用者様には上記のデメリットを知った上でのご利用をお勧めしております。
ご質問・ご不明点等ございましたら、専門スタッフが誠実に対応いたしますのでいつでもご相談ください。