合同会社とは、2006年5月1日に施行された会社法によって設立が可能になった法人形態です。合同会社は「Limited Liability Company」の略称でLLCと呼ばれることもあります。合同会社には、【1.会社への出資者=会社の経営者、2.出資者は全員有限責任者となる】といった2つの大きな特徴があり、出資者が経営上の決定権を保有しています。また、出資者は全員有限責任社員となるため、会社が高額な借金を抱えたり、倒産に陥った場合でも、出資額を超える責任を負うことはありません。出資者が多ければ多いほど、少ないリスクで設立できるというメリットから、近年では合同会社の設立数が増加傾向にあり、2019年に設立された会社のうち約26%が合同会社という登記統計のデータも存在しています。
合同会社と株式会社の最大の違いは「出資者が経営にかかわるのか」という点です。上述したように、合同会社では出資者が会社の経営者となり、出資者は全員有限責任者となります。このように、合同会社では出資者と経営者が同一であるため、会社内部で意思決定を行うことができます。一方株式会社では、一般的に投資家など外部からの出資者が直接経営に関わることはありません。つまり、出資者と経営者が同一ではないため、会社の意思決定を行う際には、株主の意見を聞くために株主総会や取締役会を開く必要があるのです。
2006年に会社法が施行されて以降、合同会社の設立数は増加傾向にあります。増加の割合においては、年間の設立数が最も多い株式会社を超えており、新設法人の4分の1を占めています。では、なぜこれほど多くの合同会社が設立されているのでしょうか?本章では、合同会社のメリットについて解説していきます。
合同会社は、設立・維持しやすいというメリットがあります。株式会社を設立する場合、登録免許税として約15万円、定款認証代として約5万円の計20万円が必要となりますが、合同会社は定款認証を受ける必要がなく、登録免許税の約6万円だけで済みます。また、株式会社の役員の任期は2年と定められており、役員を変更するたびに重任登記費用として1万円がかかるのに対し、合同会社は役員の任期が定められていないため、当該費用が発生しません。さらにお金の面だけでなく、決算公表の義務がないなど事務的な維持のしやすさもあり、株式会社よりも設立・維持のハードルが低いというメリットがあります。
合同会社のメリットとして、利益配分が自由に決められるという点も挙げられます。投資家から出資を受けている株式会社の場合は、保有している株式の割合によって配当金が決まるため、利益配分の自由度は低いといえるでしょう。しかし合同会社では、出資比率に関係なく、出資者全員の同意があれば、利益配分を自由に決めることが可能です。そのため、優秀な社員や模範となる社員に対して利益配分を大きくするなどの配分調整も可能であり、社員のモチベーションアップにつながるなど様々な効果に期待することができます。また、出資者と経営者が同一でない株式会社の場合は、意思決定のために株主総会や取締役会を開く必要がありますが、合同会社の場合は出資者と経営者が同一であるため、社内で素早く意思決定が行えるというメリットもあります。
出資額以上の責任を負う必要がないという点も合同会社のメリットだといえるでしょう。合同会社は有限責任であるため、会社が高額な借金を抱えたり、倒産になった場合でも、出資額以上の責任を負う必要はありません。このメリットは株式会社でも同様ですが、出資者の負債が増えることがないため、無理のない出資額で会社を設立することができるという安心感も大きなメリットだといえるでしょう。
合同会社には、利益配分や議決権の割合が変動しにくいというメリットがあります。株式会社の場合は、株式の発行可能総数まで株主を増やすことが可能であるため、利益配分や議決権の割合が変動しやすい傾向にあります。一方、合同会社は持ち分の上限が決まっているため、利益配分や議決権の割合が変動しにくい状況にあります。また、合同会社では出資者(=有限責任社員)が増えずらい状況にあるうえ、出資者と経営者が同一であるため、素早く意思決定を行えるというメリットもあります。
上述したように、合同会社はメリットが多い法人形態で、設立数は年々増加傾向にあります。しかし、株式会社と比較してデメリットとなる要素が存在していることも事実です。本章では、合同会社のデメリットについて解説していきます。
合同会社は、株式会社よりも信用度が低いというデメリットがあります。これは合同会社の認知度が、株式会社と比較して低いことも理由の1つとして挙げられますが、合同会社の多くが中小企業であることも影響していると思われます。実際には、Amazon・Googleなどの世界的な大企業も、日本では「合同会社」として事業を営んでいることもあり、必ずしも合同会社=中小企業というわけではありません。しかし、現状では社会的な信用や認知度が株式会社よりも劣っているという事実があります。
合同会社には、社内で派閥ができる可能性があるというデメリットがあります。というのも、合同会社では、出資者と経営者が同一であるため、出資者である社員全員が事業に関する決定権を持っています。これは、意思決定を素早く行えるというメリットがある反面、社内で派閥ができ、対立が起こる危険性も考えられます。社内で派閥ができ、対立が生じてしまうと、意思決定に時間がかかってしまうため、事業が停滞しかねません。このようなことを防ぐためにも、設立当初から社内のルール作りを慎重に行う必要があります。
合同会社は、株式会社と比較して資金面においても設立・維持しやすいというメリットがある一方で、社会的信用や認知度の低さから、金融機関からの融資を受けるのが難しいという問題も抱えています。また、株式発行による資金調達もできないため、資金調達手段としてはかなり限られてくることでしょう。本章では、合同会社の主な資金調達方法について解説していきます。
ファクタリングは、保有している売掛債権をファクタリング会社へ売却することで、本来の支払期日よりも早期に売掛金を現金化することができる資金調達方法です。金融庁なども、融資を受けにくい状況にある中小企業などに対して「売掛債権を利用した資金調達」を推奨しており、現在では多くの企業がファクタリングを利用しています。ファクタリングを利用する条件として、支払期日前の売掛債権を保有している必要がありますが、これは掛け取引を行っている企業であれば問題なく満たすことができるかと思います。また、あらゆる資金調達方法のなかでも審査通過率が高いため、利用できる可能性は極めて高いといえるでしょう。その他にも、現金化スピードが早いことや負債を抱えずに資金調達できることなどのメリットがあり、合同会社に適している資金調達方法だといえます。
日本政策金融公庫は「日本公庫」とも呼ばれており、政府が全額出資している政策金融機関のことです。融資を受けづらい状況にある中小企業に対しての融資にも積極的で、合同会社も資金調達方法の1つとして活用しています。しかし、日本政策金融公庫から融資を受けるには、事業計画書などの書類作成が必要であり、実際に融資が実行されるまでに2カ月以上かかることも珍しくはありません。そのためファクタリングと比べ、資金調達スピードが遅いことや手間が大きいことなどが懸念点として挙げられます。
社会的信用力の低い合同会社でも、信用保証協会からの保証を受けることで、融資の審査に通過できる可能性が高くなります。とはいえ、信用保証協会から保証を受けるためには保証料や審査が必要であるため、素早い資金調達には期待することができません。また、通常の融資と何ら変わりないため、もちろん返済義務が生じます。
上述したように、合同会社は株式発行による資金調達や金融機関からの融資を受けにくい状況にあるため、資金調達手段が限られています。日本政策金融公庫や信用保証協会からの保証付きの融資であれば、審査に通過できる可能性は高いものの、出資だけを受けることができる株式会社と比べて、負債を抱えるリスクは大きいといえるでしょう。また、実際に融資が実行されるまでに長い期間が必要となることも、合同会社には適していない理由だといえます。そこで、合同会社の資金調達方法としておすすめなのがファクタリングです。本章では、合同会社の資金調達にファクタリングがおすすめの理由について解説していきます。
融資においては、利用者の返済能力が重要視されるため、社会的信用力の低い合同会社が審査に通過できる可能性が低いといえるでしょう。しかしファクタリングにおいては、売掛先の返済能力が重要視されており、利用者の信用力や経営状況は審査に影響を及ぼさないため、社会的信用力の低い合同会社でも利用できる可能性は高いといえます。極端なことをいうと、利用者が赤字決済や税金を滞納している企業であっても、売掛先の返済能力が高ければ、問題なく利用することができるのです。このように、社会的信用力の低い合同会社でも利用できる可能性が高いため、ファクタリングはおすすめの資金調達方法だといえます。
ファクタリングは「売掛債権の売買サービス」であるため、負債になりません。これは金融庁からも認められています。また、債権を譲渡する際に手数料が発生しますが、手数料の支払いは1取引につき1度だけであるため、融資のように長期的な返済プランを立てる必要もありません。そのため、ファクタリングは負債を抱えるリスクが大きい合同会社にとっては、有効な資金調達方法だといえるでしょう。負債にならないということは債務超過の恐れもないため、ファクタリングを利用することで貸借対照表へ悪影響が出る心配もありません。むしろファクタリングで調達した資金を、負債の返済にあてることでオフバランス化に期待することができます。
合同会社の主な資金調達方法として、日本政策金融公庫と信用保証協会の保証付き融資を挙げましたが、どちらとも資金調達までに数か月かかってしまううえ、書類作成の手間が大きいため、急を要する場合の資金調達方法としては利用することができません。しかし、ファクタリングでは最短即日、遅くても数日での資金調達が可能であるため、資金繰りの悪化や急な出費が発生した際など、急を要する場合の資金調達方法としても問題なく利用することができます。株式発行による資金調達ができないなどの理由から、資金繰りが悪化しやすい傾向にある合同会社にとって、資金調達にかかるスピードが早いという点は、大きなメリットといえるでしょう。
ファクタリングは基本的に償還請求権がない契約です。そのため、ファクタリング会社へ債権譲渡後に、売掛金が未回収となって場合でも、ファクタリング会社がその損失を負うことになります。要するに、ファクタリング会社へ債権を譲渡してしまえば、確実に売掛金を回収することができるということです。このことから、ファクタリングは資金調達だけでなく、貸し倒れを防止する目的でも利用することができます。株式発行による資金調達が行えない合同会社が売掛金を回収できなかった場合、資金ショートを引き起こすリスクも十分に考えられます。しかし、ファクタリングを利用することで、事前に貸し倒れを防ぐことができ、確実に売掛金を回収することができるため、ファクタリングは合同会社におすすめの資金調達方法だといえます。
上述したように、ファクタリングは合同会社にとって最適な資金調達方法です。負債を抱えるリスクもなく、スムーズな資金調達が行えるため、合同会社としてもメリットが大きいといえるでしょう。しかし、利用する際に抑えておきたい注意点もいくつか存在します。本章では、合同会社がファクタリングを利用する際の注意点について解説していきます。
ファクタリングを利用する際に発生する手数料は、利用者とファクタリング会社で取引を行う2社間ファクタリングでは10~20%、売掛先も取引に参加する3社間ファクタリングでは1~9%が相場となっており、融資の金利と比べると高い傾向にあります。もちろん、売掛先の信用力や債権内容によって手数料率は変動しますが、それでも低いとはいえません。そのため、ファクタリングを利用する際は、売掛債権の額面から手数料が差し引かれた金額が入金されるということを理解しておきましょう。
ファクタリングで調達できる資金には限界があります。というのも、ファクタリングは融資ではなく売掛債権の売買サービスであるため、売掛債権の額面以上の資金を調達することはできません。そのため、債権の額面以上の資金調達を行う必要がある場合には、利用する債権の数を増やしたり、融資を検討する必要があります。
本記事では、合同会社の資金調達にファクタリングがおすすめの理由と利用する際の注意点について解説させていただきました。結論、ファクタリングは合同会社に最適な資金調達方法だといえます。なぜなら、融資よりも利用ハードルが低く、素早い資金調達が行えるうえ、負債を抱えるリスクがないからです。株式発行による資金調達ができないなど、資金調達手段が限られている合同会社ですが、ファクタリングを利用することで資金繰りの改善や資産のオフバランス化を図ることができます。合同会社で資金調達に悩まれている場合は、ぜひファクタリングの利用を検討してみてください。