オフバランスとは?
オフバランスとは、企業が保有している資産・負債でありながらも、会計上問題のない方法で貸借対照表(バランスシート)に記載しない取引のことを意味します。なぜ貸借対照表(バランスシート)に記載しないのかというと、会計上のリスクがある取引を貸借対照表(バランスシート)から切り離すことで、企業価値を向上させることができるからです。本来は「資産」の合計と「負債」と「純資産(資本)」の合計は同じ金額にならなければいけませんが、貸借対照表(バランスシート)から資産・負債をオフすることで、外部からの企業価値を高め、資産利益率(ROA)を高める効果があります。
ファクタリングによるオフバランス化とは?
企業がオフバランス化をするためには様々な方法がありますが、そのうちの1つが「ファクタリング」です。ファクタリングは、企業が保有している支払期日前の売掛債権をファクタリング業者へ売却することで早期に現金化できるサービスですが、それがどうオフバランス化につながるのでしょうか?それはファクタリングを利用しても、資産額・負債額ともに増加しないからです。貸借対照表(バランスシート)に記載がある売掛金の項目を無くし、現金を増やすことで、貸借対照表(バランスシート)を肥大化させずに資金調達を行うことができます。一方、融資による資金調達の場合は、融資額だけ資産・負債が増加するため、貸借対照表(バランスシート)が大きくなり、資産利益率(ROA)が減少してしまいます。
ファクタリングによるオフバランス化のメリット
ファクタリングによるオフバランス化のメリットは以下の通りです。
現金が増える
自社が保有する売掛債権をファクタリング業者へ売却することで手元の現金を増やすことができます。本来、売掛金は決済日までは実際のお金として利用することはできません。しかし、ファクタリングを利用し売掛債権を早期に現金化することで、事業に使用できる現金が増え、資金繰りが改善されます。ファクタリングはオフバランス化以前に資金調達方法として非常に有用なのです。
黒字倒産から回避できる
ファクタリングによるオフバランス化を行うことで、掛け取引を行ううえで最大のリスクといえる「黒字倒産」から回避することができます。(黒字倒産とは、損益計算書上では黒字の状態にも関わらず、資金繰りの関係で倒産してしまうこと)なぜなら、ファクタリングによって売掛債権を現金化することで、不良債権になってしまうリスクから回避できるからです。売掛債権が不良債権になってしまうと、自社での回収は難しく債権回収会社(サービサー)に依頼する必要があります。その際、売掛債権の額面のうち2~3%でしか買い取ってくれないことがほとんどなので、本来売掛先から支払われる予定だった現金が入ってこずに資金繰りが悪化してしまう可能性があります。そうならないためにも、売掛債権をなるべく早く現金化し、黒字倒産から回避しましょう。
資産利益率(ROA)が向上する
ファクタリングによるオフバランス化を行うことで、資産利益率(ROA)が向上します。資産利益率とは、企業が保有している資産から何%の利益を生み出しているのかを表す指標であり、この数値が高ければ高いほど、企業価値が高まります。資産利益率(ROA)は「当期純利益÷純資産×100」で計算することができます。例として現金1000万円・売掛金200万円の資産を保有している企業が、手数料10%のファクタリング会社と銀行融資を受けた際のROAを計算してみましょう。
(例)
【ファクタリング(手数料10%)の場合】
純利益180万円(売掛金200万円-手数料10%)÷純資産1180万円×100=15.2%
【銀行融資を受けた場合】
純利益400万円(売掛金200万円+融資200万円)÷純資産1200万円×100=14.2%
上記のように純資産利益率(ROA)はファクタリングの場合の方が高くなります。資産利益率(ROA)が高いということは「純資産を効率的に利益につなげている企業」として評価され、企業価値が向上します。企業価値が向上すると、おのずと外部からの評価が上がり、金融機関からの融資や投資などが受けやすくなり、資金調達方法の幅が広がります。
自己資本比率が向上する
自己資本比率は【純資産÷準資本(負債+純資産)×100】という計算で求めることができる、企業の会計上における安全性を見るための指標です。具体的には、総資本のうち返済不要の自己資本がどれだけあるかという割合のことです。この自己資本率の平均・目安は業態や事業規模によっても異なりますが20%~50%の自己資本率があれば安全な企業として認識されると言われています。50%の自己資本比率を超えれば、企業の安全性は非常に高いと言えますが、20%を下回っている場合は安全性が問題視される可能性があります。しかし、例外として自己資本比率が20%を下回る場合であっても、1年以内に返済が終了する負債が大きな割合を占めている際は、1年後には自己資本比率が回復していることが予想されます。ファクタリングで売掛債権を現金化し、負債を減らすために使用すれば、自己資本額を減らさずに純資産を減らすことができるため、自己資本比率が向上しオフバランス化を図れます。
早期の資金調達が可能
ファクタリングは融資と比較して審査に通りやすいため、早期の資金調達が可能です。もし、資金繰りが悪化している企業であれば1日でも早く資金調達を行う必要があり、調達できるまでの日数が遅れれば遅れるほど企業はダメージを受けてしまいます。しかし、ファクタリングは最短即日の資金調達が可能です。急な支払いや資金繰りの改善の資金調達方法としてファクタリングを検討してみましょう。
ファクタリングによるオフバランス化のデメリット
ファクタリングによるオフバランス化のデメリットは以下の通りです。
手数料が発生する
ファクタリングには2社間ファクタリングと3社間ファクタリングがあり、それぞれ手数料が異なります。2社間ファクタリングとは、ファクタリングを利用する自社とファクタリング業者の2社間で完了する取引のことです。2社間ファクタリングの場合は、売掛先に売掛債権を譲渡する許可を取る必要がないうえに、売掛先にバレずに売掛債権をファクタリング業者へ譲渡することができますが、債権に対して10~20%の手数料を支払う必要があります。一方3社間ファクタリングは、ファクタリングを利用する自社・ファクタリング業者・売掛先企業の3社間で完了する取引のことです。2社間ファクタリングでは、自社が売掛先から売掛債権を回収し、ファクタリング業者へ支払いますが、3社間ファクタリングでは、売掛先企業から直接ファクタリング業者へ支払われるため、売掛債権の回収リスクが低くなるため2社間ファクタリングよりも低い手数料でファクタリングを利用することができます。手数料は経費となるので、手数料が高ければ高いほど利益は減少してしまい、場合によってはファクタリングを利用しても、経営状態が悪化する可能性があります。ファクタリングを利用する際は、手数料が自社の経営状態にどれほどの影響を及ぼすのか把握したうえで利用するようにしましょう。可能であれば3社間ファクタリングを利用し、低い手数料で売掛債権を現金化することをおすすめします。
手数料が高ければ純資産利益率(ROA)の数値が下がる場合もある
ファクタリングを利用するうえでの手数料は、利益を減らしてしまうため純資産利益率(ROA)の他にも利益に関わりのある財務指標は下がる可能性があります。これは上記で述べた経営悪化にもつながります。ファクタリングを利用する際の手数料が高ければ高いほど財務指標に影響がでるので、できるだけ低い手数料のファクタリング業者を選ぶと良いでしょう。近年、ファクタリング業者は増加傾向にあり、その中には不当な手数料を徴収する業者もいるので注意が必要です。ファクタリングを利用する際は、複数社に見積もりを依頼し、手数料が自社の経営状況にどれだけの影響を及ぼすのかシュミレーションしておく必要があります。
まとめ:ファクタリングによるオフバランス化により企業価値を高めよう
ファクタリングによるオフバランス化により、貸借対照表(バランスシート)の肥大化を抑えることができ、スリムに見せることができます。また、純資産利益率(ROA)を向上させながら資金調達を行うことができることもメリットの1つです。ファクタリングによるオフバランス化によって純資産利益率(ROA)が改善されれば、企業価値が高まり、金融機関からの評価も高くなります。金融機関からの評価が高くなれば、今後の金利や融資枠について有利になり、事業拡大を図ることが容易になります。特に起業から間もない企業や小規模の企業は融資枠がすくないため、万が一のために融資枠を残しておくことをおすすめします。その代わりにファクタリングを利用し、貸借対照表(バランスシート)の肥大化を抑えながら、企業価値を高めていきましょう。