手形割引とファクタリングを比較その4|貸し倒れリスクに違いあり
企業の資金調達法として大きな注目を集めているのがファクタリングです。ファクタリング業者も数多くあり、赤字や税金の未納・滞納があっても利用できるとのことで話題になっていますよね。
しかし企業の資金調達法はファクタリングだけではありません。同じく売掛債権である受取手形を活用した手形割引という資金調達方法もあるのです。
そこで気になってくるのが手形割引とファクタリングにはどのような違いがあるのかという部分。
もちろん受取手形と売掛金という別のものを活用した資金調達法です。そしてその内容にもいくつかの違いがあることも事実。
今回は手形割引とファクタリングの貸し倒れリスクの違いについて解説していきます。実は全く異なります。この事実を知らないと思わぬ落とし穴に落ちてしまうこともあり得ますので是非参考にしていただき自社にあった資金調達法を選択してもらえればと思います。
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手形割引の貸し倒れリスクとは?
手形割引は「リコース取引(償還請求権あり)」と呼ばれる仕組みです。
分かりづらいかもしれませんが、償還義務があります。
償還義務ですが、仮に受取手形が不渡り状態になってしまい入金がされなかった場合には自社が返還をしなければなりません。要は貸し倒れリスクが有る、ということになるのです。
例えばあなたがAという会社の受取手形を持っているとします。その額面を100万円として、手形割引業者に95万円で手形割引をしたとしますね。
手形割引業者が入金期日に手形を現金化しようとするわけですが、ここで不渡りが発生すると一大事です。今度は手形割引業者が自社に対して手形の額面である100万円を請求してくることに。自社に償還義務があるので、その100万円を支払わなければなりません。
簡単に言ってしまえば、手形を手形割引業者から買い戻すことになります。もちろんA社から遅れてでも入金があれば大きなダメージにはならないかもしれません。しかし1度でも不渡りが発生したということは資金繰りがかなり厳しいと考えられることに。A社に倒産されてしまえば、回収もできなくなってしまいます。
ここで注目してほしいのが、手形割引を利用した時点で終わりではない、ということです。手形の入金までは気が抜けません。手形割引を利用したことで、かえって窮地に追い込まれることもあります。
手形割引を利用しては駄目と言っているわけではありません。手形割引を利用したいのであれば、取引先の調査をするべきなのです。資金繰りが悪いと思われる取引先の受取手形を手形割引に利用すべきではありません。
ファクタリングの貸し倒れリスクとは?
ファクタリングは「ノンリコース取引(償還請求権なし)」が原則となります。
償還請求権が「なし」に設定されているので、手形割引とは全く異なる内容になります。
ファクタリングは売掛金を業者側に売ってしまいます。売った時点で所有権を譲渡していることになるので、その後に売掛先の資金繰りが悪化して売掛金が支払われなかったとしても責任を負う必要がありません。
要は、ファクタリング業者は貸し倒れリスクを承認した上で売掛金を買い取っているのです。
ここで注目してほしいのが、ファクタリングであれば取引先の資金繰りに関係なく安心して利用できる、というものです。仮に将来的に資金繰りが悪化しようと関係ありませんよね。
ただしファクタリング業者としても貸し倒れは損失につながるので避けたいと思っています。よって売掛先の審査を行っているので、あまりに資金繰りが悪化している場合には利用できない可能性もあります。
またファクタリング業者はリスクを回避しようと、手数料率を高めに設定しています。ある程度の貸し倒れを見込んで、手数料でカバーしようと考えているのです。
償還請求権なしであることを有効活用することも考えましょう。
売掛金の貸し倒れ率が高い会社は、ファクタリングでリスクを引き下げられますよ。
手形割引とファクタリングの貸し倒れリスクの決定的な違い
手形割引とファクタリングを比較するうえで、重要なポイントの一つが「貸し倒れリスクを誰が負うのか」という点です。どちらも売掛債権を活用した資金調達方法ではありますが、このリスクの所在が根本的に異なるため、同じ感覚で利用してしまうと思わぬ経営リスクを抱えることになりかねません。
まず手形割引は、前述のとおりリコース(償還請求権あり)の取引です。受取手形をもとに資金化できる点は魅力ですが、あくまで「担保付き融資」という性質を持っています。そのため、手形の振出人である取引先が支払不能に陥り、不渡りが発生した場合には、手形割引を利用した企業自身が返済義務を負います。つまり、資金調達時点では一時的に資金繰りが改善しても、将来的に大きな返済リスクを抱えることになるのです。
一方で、ファクタリングはノンリコース(償還請求権なし)が原則となる取引です。売掛債権を売却した時点で、その債権に関するリスクも含めてファクタリング業者へ移転します。仮に売掛先が倒産したり、支払い不能に陥ったとしても、利用企業がその損失を補填する必要はありません。この点において、ファクタリングは「貸し倒れリスクを外部に移転できる資金調達方法」だと言えます。
ここで重要なのは、どちらが優れているかという単純な比較ではなく、「リスクの性質が全く異なる」という事実です。手形割引は、取引先の信用力が高く、支払い遅延や不渡りの可能性が極めて低い場合には、比較的低コストで資金調達できるメリットがあります。しかし、万が一の際には自社が責任を負うという前提を忘れてはいけません。
対してファクタリングは、手数料が高くなりやすい反面、将来的な不確実性を切り離せるという大きな利点があります。特に、取引先の財務状況が不透明な場合や、特定の取引先への依存度が高い企業にとっては、貸し倒れリスクを回避できる点が経営の安定につながります。
このように、手形割引とファクタリングの違いは「資金化のスピード」や「手数料」だけでは語れません。貸し倒れリスクを誰が負担するのか、その構造を正しく理解することが、資金調達を安全に行うためのには大事です。
貸し倒れリスクを踏まえた資金調達方法の選び方
貸し倒れリスクの違いを理解したうえで次に考えるべきなのが、「自社にとってどちらの資金調達方法が適しているのか」という視点です。手形割引とファクタリングは、企業の状況や取引先の性質によって、向き・不向きがはっきりと分かれます。
まず、取引先の信用力が高く、長年安定した取引実績がある場合には、手形割引が選択肢として有効になるケースがあります。手形の不渡りリスクが極めて低いのであれば、償還義務があったとしても実質的なリスクは小さく、ファクタリングよりも低コストで資金調達できる可能性があります。また、銀行や信用金庫などの金融機関を通じた手形割引であれば、法的な整備も進んでおり、安全性を重視する企業にとっては魅力的な選択となるでしょう。
一方で、取引先の財務状況が不安定であったり、新規取引先が多い企業、あるいは業界全体の景気変動が激しい場合には、ファクタリングの方が適しているケースが少なくありません。将来的な回収リスクを自社で抱え込まずに済むため、資金繰りの見通しを立てやすくなります。特に、売掛金の回収遅延が経営に大きな影響を与える中小企業にとっては、リスクを切り離せる点が大きなメリットです。
また、資金調達の目的によっても選び方は変わります。一時的な資金ショートを乗り切るためなのか、継続的に資金繰りを安定させたいのかによって、許容できるリスクやコストは異なります。短期的な資金繰り改善が目的で、かつ取引先の信用に問題がない場合は手形割引、将来の不確実性を避けたい場合や、経営の安定性を優先したい場合はファクタリング、という考え方も一つの基準になります。
さらに重要なのが、「すべてを一つに決める必要はない」という点です。取引先や売掛債権の内容ごとに、手形割引とファクタリングを使い分けることも可能です。信用力の高い取引先の手形は手形割引で資金化し、リスクの高い売掛先についてはファクタリングを活用する、といった柔軟な資金調達戦略は、経営リスクの分散にもつながります。
まとめ:貸し倒れリスクを理解し、自社に最適な資金調達を選択しよう
手形割引とファクタリングは、いずれも企業の資金繰りを支える有効な資金調達方法ですが、その本質的な違いは「貸し倒れリスクを誰が負うのか」という点にあります。手形割引は償還義務のあるリコース取引であり、取引先が支払い不能に陥った場合には、最終的な責任を自社が負うことになります。一方、ファクタリングはノンリコースが原則で、売掛債権を売却した時点で回収リスクを業者側へ移転できる仕組みです。
この違いを理解せずに、単純に手数料の安さや資金化の早さだけで選択してしまうと、後になって大きな経営リスクを抱えることになりかねません。特に手形割引は、利用した時点で終わりではなく、手形の決済日までリスクが継続するという点を十分に理解しておく必要があります。
一方で、ファクタリングは手数料が高くなりやすい反面、将来の不確実性を切り離せるという強みがあります。取引先の信用状況に不安がある場合や、資金繰りの安定性を最優先したい企業にとっては、非常に有効な選択肢となるでしょう。
重要なのは、どちらが「優れているか」を決めつけることではなく、自社の取引形態、取引先の信用力、資金調達の目的を総合的に判断することです。場合によっては、手形割引とファクタリングを併用し、債権ごとに使い分けることで、コストとリスクのバランスを最適化することも可能です。
資金調達は企業経営の根幹に関わる重要な判断です。貸し倒れリスクという視点をしっかりと持ち、自社にとって無理のない、持続可能な資金調達方法を選択することで、経営の安定と成長につなげていきましょう。