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スキームとは、「枠組みを持った計画」という意味を持つ、ギリシア語が語源となった言葉です。ビジネス用語としては、「計画」「枠組み」「仕組み」などの意味で利用されています。よって、「ファクタリングのスキーム」とは、「ファクタリングの仕組み」という意味になります。
ファクタリングは、利用者が支払期日前の売掛債権をファクタリング会社に売却し、早期に現金化することができる「売掛債権の売買サービス」となっています。日本の企業間取引では「掛け取引」が一般的となっているため、商品・サービスの提供から実際に代金が支払われるまでに30日~60日間の支払いサイトが存在します。売掛債権は、売掛金を請求することができる権利なのですが、支払期日までは代金を回収することができません。そのため、日本の企業では、売掛金が増加するほど「売上はあるけど手元の資金がない」といった状況に陥りやすく、最悪「黒字倒産」になってしまう可能性もあります。このような資金繰りの悪化を改善するために、融資やビジネスローンでの資金到達を行おうと考える方もいるかと思いますが、資金繰りが悪化している企業に、融資を行う金融機関はそうありません。また、融資やビジネスローンは、審査や資料作成にも時間がかかるため、急を要する資金繰りの改善に適した資金調達方法ではないといえるでしょう。そこで有効なのが「ファクタリング」です。ファクタリングは契約方法にもよりますが、最短即日で売掛債権を現金化することができるため、資金繰りの改善や急な出費が必要になった場合などに適している資金調達方法であるといえます。
ファクタリングの利用方法には、「2社間ファクタリング」と「3社間ファクタリング」があります。2社間ファクタリングは、利用者とファクタリング会社の2社間で取引を行う方法で、売掛先は取引に参加しません。一方で3社間ファクタリングは、利用者・ファクタリング会社・売掛先の3社間で取引を行う方法で、売掛先も取引に参加します。この2種類の大きな違いとしては「売掛先が取引に参加するどうか」という点が挙げられますが、それ以外にも手数料・債権譲渡登記の有無・現金化スピードなどに違いがあるため、自社に適した利用方法を選択することが重要となります。
2社間ファクタリングのスキームは以下のとおりです。 1. 売掛債権の発生 2. ファクタリング会社に申し込み 3. ファクタリング会社による審査 4. ファクタリング会社と契約 5. 売掛債権の買取・債権譲渡登記 6. 売掛先から利用者へ売掛金が支払われる 7. 利用者は支払われた売掛金をファクタリング会社へ振り込む このようなスキームとなっている、2社間ファクタリングの特徴は以下のとおりです。
2社間ファクタリングのスキームでは、利用者とファクタリング会社の2社間で取引を行うこととなっています。そのため、商品・サービスの購入と売掛金の支払いなど間接的に参加することはあったとしても、2社間ファクタリングにおいて売掛先が直接的に関わることはありません。また、ファクタリングの利用に関して、売掛先の承認を得る必要もないため、売掛先に知られずに、ファクタリングを利用することができます。
上記で述べたように、2社間ファクタリングのスキームでは、ファクタリングの利用に関して、売掛先の承認を得る必要がないため、3社間ファクタリングよりも現金化スピードが早いといえます。ファクタリング会社によって異なりますが、申し込みから現金化まで最短即日で行える場合もあるため、資金繰りの悪化や急な出費が必要となった場合の資金調達方法として、最適であるといえるでしょう。
2社間ファクタリングでは、売掛先が取引に参加しないため、一度売掛金が利用者に振り込まれます。そのため、利用者は、売掛先から振り込まれた売掛金をファクタリング会社へ振り込まなければいけない手間が発生してしまいます。なぜこのような手間が発生してしまうのかというと、2社間ファクタリングでは、債権者のファクタリング会社から売掛債権の回収を委託されている関係になっているからです。このような関係性から、売掛金は一度利用者に振り込まれ、その後利用者がファクタリング会社へ振り込むスキームとなっています。
2社間ファクタリングの手数料相場は、10~20%ほどとなっており、3社間ファクタリングよりも手数料が高いと言えます。なぜ2社間ファクタリングのほうが手数料が高いのかというと、ファクタリング会社側のリスクが大きいからです。上記でも述べたように、2社間ファクタリングでは、売掛金が一度利用者に振り込まれるため、利用者による持ち逃げ・使い込みリスクがあります。また、売掛先が取引に参加しないため、売掛先の実情が把握できないため、未回収リスクが高くなってしまいます。このような理由から、2社間ファクタリングの手数料は高く設定される傾向にあり、利用者にとってデメリットとなります。
スキームにもあるように、2社間ファクタリングでは債権譲渡登記が必要となります。債権譲渡登記とは、債権が利用者からファクタリング会社に移ったことを示すもので、登記所で手続きが行われます。ほとんどのファクタリング会社は、売掛先が取引に参加しない2社間ファクタリングにおいて、債権の二重譲渡を防止する目的で債権譲渡登記を求めます。そのため、2社間ファクタリングのスキームには、債権譲渡登記が含まれることになります。しかし、ファクタリング会社が債権譲渡登記の留保に対応している場合は例外です。その場合は、債権譲渡登記はスキームに含まれないことになります。
3社間ファクタリングのスキームは以下のとおりです。 1. 売掛債権の発生 2. 売掛先からファクタリングの利用に関して承認を得る 3. ファクタリング会社に申し込み 4. ファクタリング会社による審査 5. 債権譲渡通知 6. 売掛債権の買取 7. 売掛先からファクタリング会社に売掛金が振り込まれる このようなスキームとなっている、3社間ファクタリングの特徴は以下のとおりです。
3社間ファクタリングでは、利用者・ファクタリング会社に加えて売掛先も取引に参加するため、事前に売掛先からファクタリングの利用に関して承認を得る必要があります。スキームにもあるように、ファクタリング会社へ申し込む前に承認を得ることが一般的となっており、もし申し込み前に承認を得てない場合は、債権譲渡通知が行われ時点で、ファクタリングの利用に関して、売掛先から断られる可能性があります。そのため、3社間ファクタリングを利用する際は、事前に売掛先からの承認を得ておく必要があります。
3社間ファクタリングでは、売掛先も取引に参加するため、売掛金は売掛先から直接ファクタリング会社へ振り込まれます。そのため、2社間ファクタリングのスキームであった「利用者からファクタリング会社へ振り込む」ということはありません。また、利用者による持ち逃げリスクも軽減されるため、2社間ファクタリングよりも手数料が低く設定される傾向にあります。
3社間ファクタリングでは、売掛先に債権譲渡通知を行い、それを承諾した時点で債権が利用者からファクタリング会社へ移ったことを証明することができます。そのため、債権譲渡登記によって、債権譲渡が行われたことを証明する必要がありません。債権譲渡登記には、数万円~10万円程度の費用が掛かりますが、3社間ファクタリングではその費用を支払う必要がないため、利用者にとっては大きなメリットといえるでしょう。
今回は。ファクタリングのスキームについて解説させていただきました。どの資金調達方法においても、スキームに関して正しく理解しておくことが必要です。特にファクタリングは、独自のスキームを持っているため、利用前に必ずスキームに関する正しい知識を身に着けておきましょう。正しい知識を身に着けることができれば、予想外のことが起こる可能性も低くなるため、資金調達を成功させることにつながるでしょう。