ファクタリングを行う際、経理上もしっかりと仕訳処理を行わなければなりません。融資の場合の仕訳については広く知られていますが、新しい資金調達方法であるファクタリングについては、その経理処理、仕訳についてあまり知られていない面があります。 そこで、今回はファクタリングを行った際の仕訳処理について、具体例を見ながら覚えてください。意外な落とし穴もあるので注意してください。
目次
さまざまな経済活動に消費税が発生しますが、ファクタリングの際の手数料には、消費税がかかりません。非課税取引になります。
100万円の売掛債権を手数料10万円、手取り90万円でファクタリング会社に買い取ってもらった場合、譲渡代金、手数料どちらについても消費税がかからない非課税取引になります。
仕訳の際もここは注意してください。 会計ソフトなどで税区分を入力する際は「非課税」になります。
ファクタリングは非課税(消費税が発生しない)取引となります。もともと消費税は広くサービスの売買の際に発生する税金です。
「消費」に負担を求める税金なので、消費しないものについては、課税対象としてなじまないということで、消費税の課税がなされない非課税取引が定められています。
国税庁の見解によると、非課税取引にはさまざまなものがありますが、ファクタリングに該当するのは以下の国税庁の規定です。
(2) 有価証券等の譲渡
国債や株券などの有価証券、登録国債、合名会社などの社員の持分、抵当証券、金銭債権などの譲渡
ただし、株式・出資・預託の形態によるゴルフ会員権などの譲渡は非課税取引には当たりません。
国税庁:「非課税となる取引」より
というものがあります。ファクタリングは売掛債権の譲渡ですが、この「金銭債権」に該当します。したがって、ファクタリングの売買については非課税取引で消費税が発生しないことになります。
もしファクタリング会社の中で手数料に消費税がかかると言って請求してきた場合、その業者はほぼ100%悪徳業者、ブラック業者になります。
上の例でいうと、100万円のファクタリング手数料10%の場合、「手取り90万円、手数料10万円」が正しく、もし「手数料10万円+消費税10%=11万円、手取り89万円」の契約を提案してきた場合は、違法な契約であり、契約してはいけません。
ファクタリングを依頼するみなさま(債権者)の方にとってはあまり関係ありませんが、みなさまからファクタリングで買い取った売掛債権をファクタリング会社が別のファクタリング会社に再譲渡(「再ファクタリング」といいます)する場合には、その売掛債権売却額の「課税売上割合」というものを計算する必要があります。
<課税売上割合の計算方式>
課税売上割合={課税売上高÷(課税売上高+非課税売上高+免税売上高)}×100%
細かい内容は(あまり関係ないので)省略させていただきますが、再ファクタリングを行った場合「資産の譲渡等を行った者が当該資産の譲渡等の対価として取得したもの」(国税庁消費税の非課税取引の指針)非該当となるため、以下の原則に則って会計処理します。
・再ファクタリングの際も売買や手数料は非課税取引である
・しかし売った代金の5%を「課税売上割合」の分母「非課税売上」に計上する
このような原則が「再ファクタリング」に適用されます。 再ファクタリングは、ファクタリングで資金調達するみなさま、事業者の方には関係ないので「こういう制度もあるのか」と頭の片隅に入れておいていただければOKです。 ファクタリングの仕訳は、債権者が行うものについては基本的に非課税(ファクタリング会社は仕訳に注意すべきケースがある)ことを踏まえて、実際の仕訳を見ていきましょう。
ファクタリング取引は消費税が発生しない非課税取引だと書きましたが、もともとの債務者との取引によって生じた売掛債権は課税対象となります。
10,000円のものを売れば1,000円(軽率減税対象外)の消費税が発生するのは言うまでもありません。
下記の取引のように仕訳がなされます。
A社がB社に10,000円の部品を掛売した場合
借方 貸方
売掛金 ¥11,000 売上 ¥10,000
仮受消費税 ¥1,000
10,000円(部品の価格)+1,000円(消費税10%)=11,000円が売掛金として計上され、このような仕訳になります。
ファクタリング利用時の消費税の仕訳について順を追ってみていきましょう。
「A社がB社に200,000円の部品を販売した。売掛金入金日前に資金調達の必要がありファクタリングによって現金化した」という事例を考えます。
・5月末日締め
・翌々月末日(7月31日)払い
・サイト60日
の売掛債権です。実際の仕訳はこうなります。
(5月30日)
借方 貸方
売掛金 ¥220,000 売上 ¥200,000
仮受消費税 ¥20,000
※単に以下の仕訳でも問題ありません。
借方 貸方
売掛金 ¥220,000 売上 ¥220,000
(7月3日)
借方 貸方
未収入金 ¥220,000 売掛金 ¥200,000
(7月8日)
借方 貸方
現金預金 ¥209,000 未収入金 ¥220,000
売上債権売却損 ¥11,000
「売上債権売却損」はファクタリング手数料のことです。これ以外にも「支払手数料」などの費目を使っていただいても構いません。
この取引で「売掛金を売って現金を手に入れた」ことになりますが、ファクタリングは非課税なので、この手数料「売掛債権売却損」(や「支払手数料」)は税込みでも税抜きでもなく「非課税取引」になります。会計ソフトに入力される際は、10%の消費税込みにしないように注意してください。
3社間ファクタリングの場合は、売掛金入金日にファクタリング会社が直接債務者(B社) から回収するので仕訳はこれで終了です。しかし、2社間ファクタリングの場合は、もう1ステップの仕訳が必要になります。
(7月31日)
借方 貸方
現金預金 ¥220,000 預り金 ¥220,000
(7月31日)
借方 貸方
預り金 ¥220,000 現金預金 ¥220,000
これで、B社からの預り金と売掛金220,000円が相殺されました。
再ファクタリングの仕訳はもう少し厄介なのですが、債権者が再ファクタリングするケースはまずないので、参考程度に以下の取引を記載しておきます。
1.ファクタリング会社に債権譲渡し手数料5%を支払い現金化した
借方 貸方
現金預金 ¥209,000 売掛金 ¥220
支払手数料 ¥11,000 ※非課税取引
2.手数料10%で再ファクタリングした
2-1 債権譲渡
借方 貸方
売掛金 ¥209,000 未収入金 ¥209,000
2-2 ファクタリング会社再ファクタリングする(ファクタリング契約)
借方 貸方
未収入金 ¥188,000(*) 売掛金 ¥209,000
支払手数料 ¥21,000 ※非課税取引
2-3 現金化
借方 貸方
現金預金 ¥188,000 未収入金 ¥188,000
*に該当する188,000円の5% 188×5%=9,400円が「課税売上割合の計算上の分母(総売上高)」に算入されることになります。
「再ファクタリングの場合、仕訳や会計処理が厄介だ」くらい覚えておいてください。
ファクタリングによる資金調達は比較的新しい方法であり、簿記の際の仕訳もまだ手形取引のように浸透していない面もあります。
今回紹介したように、ファクタリング手数料は非課税であり、再ファクタリングの際の課税売上割合のみ要考慮となりますが、普通に売掛債権を譲渡する分にはあまり考えなくても良いものになっています。 もし(ファクタリング業者ではなく)売掛債権を売買し、再譲渡するようなことがあれば、適宜専門家にご相談ください。的確にアドバイスいたします。
新しい形の資金調達方法であるファクタリングは、税務調査の際などにチェックされやすい可能性もあります。気を抜かず、しっかりした仕訳をしてください。繰り返しになりますが、ファクタリングの手数料は非課税であり、仕訳の際も注意してください。請求するファクタリング会社は悪徳業者です。