未収入金と売掛金の定義
未収入金と売掛金は、どちらも今後受け取る予定の収入を意味することから、似たようなイメージを持たれがちです。
しかし、未収入金と売掛金の定義は異なります。
正しい知識を身につけておかなければ、間違った会計処理を行ってしまう可能性があるため、注意が必要です。
本章では、未収入金と売掛金の定義について解説していきます。
未収入金とは
未収入金とは、企業活動のメインではない部分で発生した金銭債権のことです。
例えば、IT企業がパソコンを、飲食店が調理器具を売却して債権が発生した場合、メインの業務ではない部分で収入を得ているため、未収入金として処理されます。
ただ、未収入金の発生条件として、発生から入金までの期間は1年以内でなければいけません。
なお、一部の業種では、メインの業務で発生した債権であっても、未収入金として処理されるケースもあります。
売掛金とは
売掛金とは、商品・サービスの提供など、企業活動のメインとなる部分で発生した金銭債権のことです。
売掛金は「信用取引」のなかで成り立つものであるため、売掛先側の支払い義務や期日など、法律的な拘束力が弱い傾向にあります。
そのため、書面での約束だけでなく、口頭での約束でも売掛金は発生します。
信頼関係が構築できていない会社と取引した場合、売掛金が未回収になるリスクがあるため、注意が必要です。
未収入金と売掛金の共通点と異なる点
未収入金と売掛金は、どちらも資産として処理される勘定科目です。
「今後受け取る資産」という共通点があり、貸借対照表の左側にある「借方」に計上します。
未収入金、売掛金ともに、後日代金を支払うことが約束されている金銭債権であるため、会計上も資産として扱うのです。
また、どちらも発生から一定の期間を過ぎると時効になる可能性があるという共通点があります。
一方、未収入金と売掛金の異なる点は「企業活動のメインで発生した収入であるかどうか」です。
企業活動のメインで発生したものは売掛金、それ以外で発生したものは未収入金として分類されます。
未収入金と売掛金の仕訳方法
未収入金と売掛金では、仕訳の方法が異なります。
正しい会計処理を身につけるためにも、本章の内容は理解するようにしましょう。
本章では、未収入金と売掛金の仕訳方法について解説していきます。
未収入金の仕訳方法
未収入金の仕訳方法をご紹介します。
今回は、飲食店がデリバリーで使用している車両運搬具を100万円で売却したケースを例に解説していきます。
車両運搬具を100万円で売却
借方 → 未収入金100万円
貸方 → 車両運搬具100万円
車両運搬具の売却から代金の受け取りまでにタイムラグがある場合は、未収入金を借方に計上します。貸方には、車両という資産が減少しているため車両運搬具を記載します。
100万円の未収入金を回収
借方 → 現金100万円
貸方 → 未収入金100万円
100万円の未収入金を回収した場合、現金という資産が増加するため、現金を借方に計上します。未収入金は、現金の回収により相殺されるため、貸方に記載します。
売掛金の仕訳方法
売掛金の仕訳方法をご紹介します。
今回は、企業活動のメインとなる部分で100万円の商品を販売したケースを例に解説していきます。
100万円の商品を販売
借方 → 売掛金100万円
貸方 → 売上100万円
メインとなる業務で商品を販売し、代金の支払いまでにタイムラグがある場合は売掛金が発生します。売掛金は資産の増加であるため、借方に計上します。
100万円の売掛金を現金で回収
借方 → 現金100万円
貸方 → 売掛金100万円
100万円の売掛金を現金で回収した場合、売掛金という資産が減り、現金という資産が増加するため、上記のような会計処理となります。
未収入金はファクタリングで利用できる?
未収入金と売掛金には、「今後受け取る資産」という共通点があります。
そのため、売掛金を早期に現金化できるファクタリングに、未収入金を活用できるのではないかと考える方も多いのではないでしょうか。
結論から申し上げますと、未収入金をファクタリングに活用することは可能です。
これはファクタリングという取引が「債権の売買契約」だからです。
ただ、未収入金は売掛先との継続的な取引により発生しているものではないため、売掛金に比べて評価が低くなりやすい傾向にあります。
そのため、売掛金の方がファクタリングに適しているといえます。
ファクタリングに売掛金を使用するメリット
売掛金は、未収入金と比べてファクタリングに適している債権です。
ファクタリングで売掛金を使用することで、審査や条件面でさまざまなメリットがあります。
本章では、ファクタリングに売掛金を使用するメリットについて解説していきます。
売掛金の支払いサイトを短縮できる
ファクタリングに売掛金を使用することで、売掛金の支払いサイトを短縮できるメリットがあります。
未収入金をファクタリングで使用する場合は、支払期日までの期間が審査に大きな影響を及ぼします。
しかし売掛金の場合、支払期日までの期間が2~3ヵ月ほどであれば、問題なく売掛金を現金化することができます。
売掛金の支払いサイトを短縮することは、資金繰りの改善や急な支払いへの対応に役立ちます。
手数料が優遇される
ファクタリングに売掛金を使用することで、手数料が優遇されるメリットがあります。
売掛金は、売掛先との継続的な取引によって発生した収入であるため、未収入金よりも未回収に陥るリスクが低いです。
未回収リスクが低ければ、ファクタリング会社としても安心して取引を行えるため、手数料が低くなりやすい傾向にあります。
手数料が低ければ、資金繰りに及ぼす影響も少ないため、安心してファクタリングを利用できます。
売掛金を確実に回収できる
ファクタリングに売掛金を使用することで、売掛金を確実に回収できるメリットがあります。
ファクタリングは、償還請求権なしの契約が原則です。
利用者は、ファクタリング取引後に売掛金が未回収になった場合でも、弁済を求められることがないため、売掛金を確実に回収できます。
売掛金の未回収は、資金繰りの悪化や連鎖倒産につながる可能性があります。
売掛先の経営状況が不安定な場合や倒産の可能性がある場合は、ファクタリングを活用して売掛金を回収しておくようにしましょう。
利用ハードルが低い
ファクタリングは、利用ハードルが低い資金調達方法です。
利用に際して、担保・保証人を設定する必要がないうえ、提出書類も少ない傾向にあります。
また、審査では売掛先の信用力が重視されるため、赤字決算や債務超過などの問題を抱えている場合でも利用可能です。
一方、未収入金の場合は、未収入金の存在を証明するために、多くの書類を提出しなければいけません。
少ない手間でファクタリングを利用したい方は、売掛金を活用してください。
審査に通過しやすい
未収入金よりも売掛金の方が、ファクタリングの審査に通過しやすい傾向にあります。
これは、未収入金が企業活動のメイン以外で発生した一時的な収入であるためです。
一方、売掛金は継続的な取引によって発生した収入であるため、ファクタリング会社からの評価が高くなりやすい傾向にあります。
審査通過が優遇されるだけでなく、入金スピードや買取可能額など、条件でも優遇される可能性があります。
未収入金はファクタリングに利用できる?のまとめ
今回は、未収入金と売掛金の共通点や異なる点、未収入金をファクタリングに活用できるかについて解説させていただきました。
未収入金と売掛金は、どちらも「今後代金を受け取る権利」という共通点があるものの、その本質は全く異なるものです。
金融機関やファクタリング会社が、企業の財務状況を把握するうえで重要な役割を担っているため、適切に処理する必要があります。
また、未収入金よりも売掛金の方が、ファクタリング会社から高い評価を得ることができます。
好条件でファクタリングを利用するには、売掛金を活用することが望ましいといえます。