近年、少子高齢化や働き方の多様化の影響により、深刻な人材不足に陥っている事業主も少なくありません。
人材不足解消のために新卒採用に注力する事業主も多いかもしれませんが、即戦力となる労働者を採用したいのであれば中途採用に注力することをおすすめします。
本記事では、中途採用に注力していきたい事業主が活用すべき「早期再就職支援等助成金(中途採用拡大コース)」について解説していきます。
早期再就職支援等助成金「中途採用拡大コース」とは
早期再就職支援等助成金の「中途採用拡大コース」とは、中途採用者の雇用管理制度を整備したうえで中途採用の拡大を図る事業主に対して助成するものです。
新卒採用ではなく、中途採用に注力した事業主を助成する制度となっており、即戦力労働者の採用を検討している事業主を中心に活用されています。
早期再就職支援等助成金「中途採用拡大コース」の内容
ここからは本記事の本題である「中途採用拡大コースの内容」について解説していきます。
助成内容や助成対象となる労働者・事業主の要件、助成金額等について解説していきますので、ぜひ参考にしてください。
中途採用拡大コースの助成内容
本コースには以下の2つの助成内容が設けられています。
1.中途採用率の拡大
中途採用率を※20ポイント以上上昇させた事業主を助成する
2.45歳以上の中途採用率の拡大
以下のすべてを満たす事業主を助成する
・中途採用率を※20ポイント以上上昇させた
・上昇させた※20ポイントのうち、45歳以上の労働者で10ポイント以上上昇させた
・中途採用率のポイント上昇に該当する45歳以上の労働者是認の賃金を前職と比べて5%以上上昇させた
※中途採用率拡大目標値
中途採用拡大コースの支給対象者
本コースでは、次のすべての条件を満たす労働者が支給対象者となります。
支給対象者の数は、以下で解説する中途採用拡大目標値の計算式にも活用するので、しっかりと理解しておきましょう。
1.申請者にあたる事業主に中途採用で雇入れられた
2.雇用保険の一般被保険者または高年齢被保険者として雇入れられた
3.期間の定めのない労働者として雇入れられた
4.雇入れ日の前日から起算してその日以前1年間に、雇用関係・出向・派遣・請負または委任により当該事業主の事業所で就労したことがない
5.雇入れ日の前日から起算してその日以前1年間に、申請者にあたる事業主と密接な関係にある事業主に雇用されていた経験がない
6.雇入れ時の年齢が45歳以上である(助成内容2の場合のみ)
中途採用率拡大目標率の計算方法
本コースでは、助成対象になるかを判断するためにポイント制度を設けています。
ポイントの計算式は以下の通りで、本コースを活用するためには「2-1」が20以上にならなければいけません。
計算式には上記の「中途採用拡大コースの支給対象者」を活用します。
1.中途採用計画開始日の前日から過去3年間の中途採用率
【計算式】
(過去3年間に雇入れた1~5のすべてに該当する労働者数)÷(過去3年間に雇入れた2,3に該当する労働者数)×100
2.中途採用計画期間終了時の中途採用率
【計算式】
・中途採用計画期間中に雇入れた人数が50人未満の場合
(期間中に雇入れた1~5のすべてに該当する労働者数)÷(期間中に雇入れた2,3に該当する労働者数)×100
・中途採用期間中に雇入れた人数が50人以上の場合
(10人+(期間中に雇入れた1~5のすべてに該当する労働者数-10人)×2)÷(期間中に雇入れた2,3に該当する労働者数)×100
なお「45歳以上の中途採用率の拡大」に関する助成を希望する場合は、上記の計算式で20ポイント以上必要となるうえ、以下の「2-1」で10ポイント以上獲得しなければいけません。
こちらの計算式でも、上記の「中途採用拡大コースの支給対象者」を活用します。
1.中途採用計画開始日の前日から過去3年間の45歳以上中途採用率
【計算式】
(過去3年間に雇入れた1~6のすべてに該当する労働者数)÷(過去3年間に雇入れた2,3に該当する労働者数)×100
2.中途採用計画期間終了時の45歳以上中途採用率
【計算式】
(期間中に雇入れた1~6のすべてに該当する労働者数)÷(期間中に雇入れた2,3に該当する労働者数)×100
上記で「中途採用率の拡大」と「45歳以上の中途採用率の拡大」に関する計算式をご紹介しましたが、同一期間中に両方の助成内容を活用することはできません。
中途採用拡大コースを活用する際は、どちらか一方の内容しか活用できないことを覚えておきましょう。
中途採用拡大コースの助成金額
本コースの助成金額は以下の通りです。
・中途採用率の拡大:1事業所あたり50万円
・45歳以上の中途採用率の拡大:1事業所あたり100万円
早期再就職支援等助成金の他のコースのように追加で助成金を受給できる仕組みはなく、シンプルなものとなっています。
中途採用拡大コースの申請の流れ
ここからは、中途採用拡大コースの申請の流れについて解説させていただきます。
申請の流れは以下の通りです。
1.中途採用計画の届け出
2.中途採用計画の実施
3.支給申請
早期再就職支援等助成金「中途採用拡大コース」を活用する場合は、まず中途採用計画を計画開始日の前日から起算して6ヵ月前の日から中途採用計画の開始日の前日までに必要書類と併せて労働局へ提出する必要があります。
その後、労働局へ提出した計画届の内容に変更がある場合や取り下げが生じた場合は、その都度労働局へ中途採用計画変更届を提出しなければいけません。
変更届の提出を怠ると、助成金を受給できない可能性があるため、注意が必要です。
その後中途採用計画を実施し、計画期間が終了した日の翌日から起算して6ヵ月を経過した日の翌日から2ヵ月以内に支給申請を行ってください。
早期再就職支援等助成金「中途採用拡大コース」を活用する際の注意点
本コースは、事業主の中途採用拡大に関する取組みに対して助成する制度です。
即戦力となりえる中途採用に注力している事業主にとっては非常にメリットがある制度となっていますが、実際に活用する際はいくつか注意しなければいけない点は存在します。
本章では、早期再就職支援等助成金「中途採用拡大コース」を活用する際の注意点について解説していきます。
「中途採用率の拡大」と「45歳以上の中途採用率の拡大」は併用できない
本コースでは「中途採用率の拡大」と「45歳以上の中途採用率の拡大」のどちらかの取り組みに対して助成を受けることができます。
同一期間中に2つの取組みに対して助成を受けることはできず、どちらか一方の取組みに対する助成金しか受給することができません。
助成金額としては「45歳以上の中途採用率の拡大」の方が大きいので、45歳以上の中途採用が多くなる予想が立てられている場合は「45歳以上の中途採用率の拡大」で申請を行いましょう。
設立間もない事業主は活用できない
申請者にあたる事業主が設立間もない場合は、本コースを活用することができません。
なぜなら、中途採用計画を提出するには、計画期間の初日の前日から起算して3年前の日の時点で雇用保険適用事業所である必要があるからです。
設立間もない事業主は上記条件を満たせないので、本コースを活用することは不可能です。
また、3年前の日の時点で雇用保険適用事業所となっている必要があるのと同時に、雇用保険被保険者が存在する必要もあるので、これから活用を検討されている方は覚えておきましょう。
【早期再就職支援等助成金】中途採用拡大コースの内容と活用する際の注意点について解説のまとめ
今回は、早期再就職支援等助成金「中途採用拡大コース」の内容と活用する際の注意点について解説させていただきました。
本コースは、事業主の中途採用への取組みを促進し、離職者の早期再就職を目的としています。
実際に助成金を受給するためには、上記で解説したようにいくつかの要件を満たす必要がありますが、事業主にとってメリットがある制度であることは間違いありません。
中途採用への注力を検討されている事業主の方は、ぜひ活用してみてください。