ファクタリングの仕訳方法とは?
近年、手軽な資金調達の手段の1つとしてファクタリングを選択する企業が着実に増えてきています。ファクタリングは売掛金を売却して現金化する仕組みであるため、借入とは異なり負債を増やさずに資金を確保できる点が大きな特徴です。貸借対照表上の負債が増えないことで、財務状況を健全に保ちやすくなるというメリットもあり、経営の安定化を重視する企業から注目を集めています。
負債が増えなければ、銀行融資やビジネスローンといった他の資金調達手段にも良い影響を与えます。金融機関は企業の返済能力を重視して審査を行うため、借入が多い状態では「返済リスクが高い」と判断され、融資を断られてしまうケースも少なくありません。その点、ファクタリングは負債として計上されないため、将来的な資金調達の選択肢を狭めにくい方法だと言えるでしょう。
とはいえ、日本ではファクタリングが欧米ほど一般的な資金調達手法として浸透しているわけではなく、「名前は聞いたことがあるけれど、実際に利用したことはない」という方も多いのではないでしょうか。特に初めてファクタリングを検討する際、多くの経営者や経理担当者が悩むポイントの一つが、会計処理、つまり仕訳の方法です。
ファクタリングを利用した場合、単純に「売掛金を減らして現金を増やす」だけの処理では済みません。売掛金の満額が入金されるわけではなく、そこからファクタリング手数料が差し引かれた金額が振り込まれるため、その差額をどのように処理すべきか迷ってしまう方も多いはずです。仕訳を誤ると、決算書の数字にズレが生じ、正確な財務状況を把握できなくなる可能性もあります。
そこで本記事では、ファクタリングを利用した際の基本的な仕訳方法について、初めての方にもわかりやすく解説していきます。これからファクタリングの利用を検討している方はもちろん、すでに利用しているものの会計処理に不安を感じている方にとっても参考になる内容です。ぜひ最後までご覧ください。
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まずは通常の売掛金取引の仕訳を確認しよう
掛け取引をしたときの仕訳方法についておさらいしてみますね。
売上が100万円発生したケースで、全額掛け取引であると仮定します。
<売上が発生したときの仕訳>
(借り方)売掛金 100万円 (貸し方)売上 100万円
期日が来ると売掛金が入金されることになります。
入金時の仕訳を以下に記載します。
<売掛金が入金したときの仕訳>
(借り方)現金預金 100万円 (貸し方)売掛金 100万円
何も問題がなければ上記のような仕訳で完了します。
発生した売掛金が回収できた、ということになるわけです。
問題となってくるのは、ファクタリングを利用したときの仕訳です。果たしてどのような勘定項目を利用することになるのでしょうか?
ファクタリングを利用したときの仕訳
同じく100万円の売掛金が発生したものとして仕訳します。
ファクタリングに関してはその発生した100万円の売掛金を利用したとします。
<売上が発生したときの仕訳>
(借り方)売掛金 100万円 (貸し方)売上 100万円
売上発生時の仕訳は通常のものと違いはありません。そもそもまだファクタリングを利用していないので、処理で異なる部分はないのです。
ただしここからは通常の仕訳とは大きく異なっていきます。
まずはファクタリング契約時の仕訳についてお伝えします。
<ファクタリング契約時の仕訳>
(借り方)未収金 100万円 (貸し方)売掛金 100万円
売掛金100万円をファクタリング利用することになるので、まずは売掛金を処理することになります。一方でまだ入金が確定していないので未収金の勘定項目を設定するわけです。
未収金については、未収入金とする場合もあります。どちらでも問題はありません。
ファクタリング契約が終了すると入金されることになります。ファクタリングに関しては最短即日入金の可能性もあるので、未収金はすぐに処理される可能性もありますよ。
こちらでは手数料率を20%(20万円)とし、入金されるのは80万円として仕訳します。
<ファクタリング業者から入金したときの仕訳>
(借り方)現金預金 80万円 (貸し方)未収金 100万円
売上債権売却損 20万円
ファクタリング契約時に発生させた未収金の100万円を処理することになります。
入金額は80万円なので、差し引き20万円を損したことになります。損失として計上しなければなりません。
ファクタリング手数料に関しては「売上債権売却損」として処理することになります。ファクタリングなどで売掛債権を売却した時に発生した損失を計上する勘定科目の一つです。
他にも「売上債権譲渡損」や「売掛債権譲渡損」として計上することもあります。どの科目でも問題はありません。とりあえず売掛金を売却して損が出たことを計上すればよいのです。
ファクタリングの仕訳でよくある勘違い
ファクタリングは「売掛金を現金化する資金調達方法」として知られていますが、会計処理の場面では誤った仕訳が行われてしまうケースも少なくありません。特に、初めてファクタリングを利用する企業や、経理担当者がしくみを十分に理解していない場合には、決算書に影響を及ぼすミスにつながることもあります。ここでは、ファクタリングの仕訳でよくある勘違いについて整理しておきましょう。
まず多いのが、「ファクタリングを借入金として処理してしまう」という誤りです。ファクタリングは金融機関からお金を借りる行為ではなく、あくまで売掛金という資産を売却して資金を得る取引です。そのため、貸借対照表に借入金として計上してしまうと、本来増えないはずの負債が増加してしまい、財務状況を正しく反映できなくなります。ファクタリングの大きなメリットである「負債を増やさない資金調達」という特徴が、仕訳ミスによって失われてしまう点には特に注意が必要です。
次に多い勘違いが、「ファクタリング手数料を支払手数料や支払利息として処理する」ケースです。ファクタリングで差し引かれる手数料は、借入に伴う利息ではありません。そのため、支払利息として処理するのは適切ではなく、売掛債権を売却したことによって生じた損失として処理する必要があります。一般的には「売上債権売却損」「売上債権譲渡損」などの勘定科目を用いるのが正しい方法です。
また、「売掛金が帳簿上に残ったままになっている」というミスも見受けられます。ファクタリング契約を締結した時点で、売掛金はすでに自社の資産ではなくなっています。そのため、売掛金を消し込み、未収金などに振り替える処理を行わないと、実際には存在しない資産が帳簿に残ってしまうことになります。これは、資産状況を過大に見せてしまう原因にもなり、決算書の信頼性を損なう結果につながります。
さらに、「入金額=売掛金額として処理してしまう」点も注意が必要です。ファクタリングでは、売掛金の満額が入金されるわけではなく、手数料が差し引かれた金額が振り込まれます。そのため、差額をきちんと損失として処理しなければ、売上や利益の数字にズレが生じてしまいます。
このように、ファクタリングの仕訳にはいくつかの落とし穴がありますが、基本的な考え方は「売掛金を売却した取引である」という点を押さえることです。この視点を持って処理を行えば、大きな間違いは防ぐことができるでしょう。正しい仕訳を行うことで、ファクタリングのメリットを最大限に活かし、健全な財務管理につなげることが重要です。
処理の仕方に迷ったときは積極的に専門家に相談するのも1つの手段です。
ファクタリングの仕訳を正しく理解して賢く資金調達を行おう
ファクタリングは、売掛金という既存の資産を活用して資金を確保できる点が大きな特徴であり、借入に頼らずにキャッシュフローを改善できる有効な手段です。特に、財務体質の健全性を重視する企業にとっては、負債を増やさずに資金調達ができる点は大きな魅力だと言えるでしょう。しかし、そのメリットを十分に活かすためには、会計処理、特に仕訳の正しい理解が欠かせません。
ファクタリングは借入ではないため、通常の融資や手形割引とは考え方が大きく異なります。この違いを理解しないまま処理を行うと、本来計上すべきでない負債が増えてしまったり、損失の扱いを誤ってしまったりと、決算書に歪みが生じる可能性があります。仕訳は単なる事務作業ではなく、企業の財務状況を正確に外部へ伝えるための重要な要素であることを意識しておく必要があります。
特に注意したいのは、ファクタリングによって受け取る金額が売掛金の満額ではない点です。手数料が差し引かれることで必ず差額が生じるため、その部分を適切に損失として処理することが求められます。この処理を曖昧にしてしまうと、利益が実態よりも多く見えてしまい、経営判断を誤る原因にもなりかねません。
また、ファクタリングを利用する背景や目的によっては、今後の資金調達戦略全体にも影響を与えます。銀行融資との併用を考えている場合や、資金繰りの安定化を中長期的に目指している場合には、ファクタリングを「一時的な現金化手段」として正しく位置づけることが重要です。そのためにも、仕訳を通じて取引の実態を正確に把握しておくことが、経営管理の質を高めることにつながります。
ファクタリングは決して難しい会計処理ばかりではありませんが、理解が不十分なまま進めると、思わぬところでリスクを抱えてしまうこともあります。少しでも不安がある場合には、税理士や会計の専門家に相談しながら進めることで、安心して制度を活用することができるでしょう。正しい知識を身につけ、ファクタリングを自社にとって有効な資金調達手段として活かしていくことが大切です。